Clockの雑文置き場

Clockの雑文置き場です。

2万円弱の小型PCにLinuxとSteam入れてゲーム機にしてみた話。

1. はじめに

本文書は、筆者Clockが格安2万円弱の小型PCにUbuntuとSteamのみを入れてゲーム機にしようと試みた際の記録である。
本文書に影響を受けた読者の行動で不利益があったとしても、筆者はその責任を負わないものとする。

……と堅苦しく書いてはみたが、実際は日記のようなもの。

2. 検討 〜そもそもなんでこんなことを?〜

まずは、筆者がこのような奇行に至った経緯を説明する。
なお、本章自体がどちらかといえば余談に属する話となる。経緯に興味のない方は読み飛ばすのが良いと思う。

SteamDeckという機械について聞いたことのある読者も多いのではないだろうか。
Steamを運営するValve社が2022年に世に送り出した、Steam専用のゲーム機である。
筆者もこのゲーム機に興味を持っていた一人であった。

しかし、実際に購入を検討したところ、三つほど問題点が浮上した。


[問題点1] 物理的に重すぎる

SteamDeckの重量は、公式発表を参照すると669gとされている。
さてグラム数だけではイマイチぴんと来ないが、Nintendo Switch389g。SteamDeckの方がおよそ1.7倍重い、という計算になる。
そもそもSwitchでも両手で持ってゲームするには若干抵抗のある重さなのだ。その1.7倍のものを持って遊ぶ、というのはあまり想像したくないものがある。

[問題点2] お値段が張る

SteamDeckのお値段は一番安いモデルでも59,800円である。実のところ、これはPS5と比較してもあまり差がない。
しかもこの一番安いモデルには64GBのSSDしか搭載されておらず、重いゲームなら一本でアウトであろう。
なんらかの方法でSSDかHDDを増設なりすれば解決するかもしれないが、それはそれでSteamDeckの利点を殺している気がする。
じゃあ128GBなら、となるが、128GBの場合79,800円となる。高ぇ………………。

そして筆者個人のゲーム環境に由来する話となるのだが、筆者個人はSteamDeckをTV兼用ディスプレイに繋ぎたいと考えていた。*1
この場合追加のDockを買わねばならないのだが、記事執筆時点での価格は89ドルとなっている。執筆時点での円換算では約12,000円となる。えっ追加分だけで1万円超えるの??

……というわけで、どう頑張っても約7万円の出費は避けられない。

[問題点3] (個人的事情)そもそも持ち歩く予定がない……ということは……

実は筆者は割とインドアなゲーマーで、出先にゲーム機を持っていく、ということ自体がほぼない。
とすると、おそらく筆者がSteamDeckを買ったとしてもSteamDeck本体の画面が飾りになる可能性が高い
ついでに言うならバッテリーすら無用の長物になる可能性がある。


さて。これまでの問題点を考慮した上で、そもそもSteamDeckとはなんぞや。ということを考えてみる。
Wikipediaの記事での定義は以下の通りだ。

Steam Deck(スチーム デック)は、Valve Corporationより販売されている携帯ゲーム機型ゲーミングPC

……とある通り、本質的にはSteamDeckはパソコンに近い。
起動すればSteamの画面が立ち上がるしそこから先はコントローラ操作になるとしても、根本的にはArchLinuxベースのOSを搭載したパソコンであると言える。

ここまで考えたところで、筆者の頭に一つの仮説が現れた。

「もしかしてSteamOS入れてコントローラ繋げばSteamDeckである必要ないんじゃね?」

正しそうだ。
実際この仮説が正しいなら、表面の画面や付属コントローラ、バッテリー分のコストが浮く可能性がある。

が、とはいえ、ここまでの仮説はすべて机上の空論に過ぎない。

仮にSteamDeck同等のPCを買う、となるとそれはそれで値段が張る。
DigitalDIYの試算によれば7万円程度とされている。
似たような構成を試しているブログなどはいくつかあったが、実際に筆者の生活環境に取り入れて期待通りの運用が可能かどうかは読んでもわからない。
実際に数万円を投入して、結局期待したものではありませんでした、となると心に深い傷を負ってしまう。それはさすがに避けたい。

ならば、と。筆者が思いついた案は……
一度格安PCで運用して評価してみるのはどうだろうか?

……というわけで、格安小型PCをゲーム機として運用する評価試験プロジェクトがひっそりと開始された。

3. 導入 〜環境構築〜

3.1 PC選定&購入

というわけで、適切な機械を探すために筆者は一路Amazonに向かった。
こういう文脈で行き先が本当にアマゾンなことってある???

さて。最近のPC事情を筆者はあまり知らなかったのだが、最近は1kg未満かつ3万円未満という超小型格安PCがそれなりの数出回っていて少し驚いた。PCってこんな小さくなるものなのか。
ちなみにバルク品のPC(1万円未満でOSの入っていない通常サイズのやつ)を使うのも考えたが、この案は最終的に却下となった。主な理由の一つは、省スペース性・省電力性・静音性の面で小型PCに優位がある点。もう一つは、環境構築に失敗した際に完全に置物になるのを避けたいためである。Windows11が最初から入っているならば再インストールメディアも確保できるし、最悪のケースは一応避けることができると判断した。

そして今回は2万円前後のPCを用いる方針とした。
更に出費とスペックを切り詰めるのも考えたが、あまりに切り詰めすぎてsteamすら動かなくては本末転倒である。
慎重に調査と検討を重ねた結果、下記のPCを採用することとなった。 www.amazon.co.jp

気になる購入価格だが、なんと約18,000円である。やっすい。*2
また、本PCに搭載されているCPUのN95は割と新しいものでありながら、何人かのブロガーにより「コスパがいい」という評価を受けていることを確認した。そしてAmazonには静音性が良いというレビューも寄せられている。本当であれば嬉しいところだ。


注文から1日。
注文したPCが我が家に到着した。そのお姿を皆様にもご覧いただこう。

一辺が大体15cmというところ、高さは10cmもなさそうだ。超小型PC、という呼び名に恥じない佇まいといえる。
重さは公称では800gとされているが、実際にそのくらいだと思う。カバンに入れて持ち歩く程度であれば支障はない。

というわけで、このPCこそが本文章の主役である。……とはいえ、これはPC(パソコン)ではない。ゲーム機である。

「小型パソコン?贅沢な名だね、今からお前の名はゲーム機だ、いいかいゲーム機だよ、わかったら返事をしなゲーム機!*3

3.2 OSの選定と導入

さて。
念の為Windows11の再インストールディスクを作った上で、Windows11を抹消して別のOSを投入することになる。

当初の目的からすれば本来ここはSteamOSを導入すべきなのだろうが、今回はUbuntu Desktop*4を採用した。
SteamOSを採用しなかった最も大きな理由は、2023/06/23現在、最新のSteamOS 3.0が公式には公開されていないという点である。
一応Steamの公式ページにそれらしきものはあるのだが記載を見る限りおそらくこれは少し古いSteamOS2.0思われ、すでにそちらは更新を凍結したらしいと聞いている。
また、SteamOS3.0ベースのHoroISOというプロジェクトもありこちらも試したが、こちらはインストールプロセスが完了まで進まなかった。*5
有志が提供しているChimeraOSも試してみて良好な起動は得られたとはいえ、こちらは情報が少なすぎて長期運用に支障がありそうだ。

ということで更に調べたところ、Ubuntu DesktopであればSteamが公式に対応していることが判明した。
UbuntuLinuxの中では広く使われている方であるため、困ったときの情報の入手性もいい。
よって、今回はUbuntu Desktopを採用することにした。

なお、Ubuntu DesktopのインストールはUSBメモリにデータ入れてパソコンをリセットすれば大体できる……と言ってしまえば簡単なのだが、場合によってはBIOSの設定が必要となり、ここで無責任に書いてしまうのは少し抵抗がある。
よって、もし本機のような運用をされたい場合は自力で調べられたし、とのみ記しておくことにする。


さて。Ubuntuを導入したが、今回は更に軽さにこだわりたい。
Ubuntuは通常GNOMEというデスクトップ環境を採用しているが、実はこれ、意外にメモリを食うとの声がちらほら聞かれる。外観や操作性向上の対価であるため仕方ないが、今回のOSに求められるものではない。
よって今回はXfceというより軽量なデスクトップ環境を導入することにした。

loumo.jp

上記の記事などを参考にしつつXfceを導入し、現在のデスクトップ環境はこのような感じになっている。

なんという殺風景さ。なんという機能美。これでいい。
今回採用するOSにとって一番大事な仕事はSteam様の邪魔をしない。これに尽きるのだ。

3.3 Steam導入

gihyo.jp

この辺の記事を参考にすると、UbuntuへのSteamインストール自体は簡単に完了する。
また、せっかくなので上記の記事を参考に「他のすべてのタイトルでSteam Playを有効化」にもチェックを入れておくことにする。これによって、公式にはWindowsのみに対応しているゲームであっても強引にUbuntu上で動かすことが可能となる。

さて何度も記載しているが、今回本機に求められる役割はゲーム機である。ということは、以下の要素を満たしていることが望ましい。

  • 電源オン直後にSteamが立ち上がる
  • コントローラーで操作できる
  • キーボードとマウスが無くても基本的な操作ができる

ここまでの記載で、すでにピンと来ている方もいるだろうか。
Steamには「Big Pictureモード」なるものが存在する。記事を見る限りこれを使えばよさそうだ。というわけで設定を開いてみよう。

えっ嘘でしょ全部終わった。

設定画面から上と下の項目にチェックを入れれば、OS起動時にBig PictureモードのSteamが起動する。やりたいこと3つのうち2つが終わってしまった。
とはいえ、せめてコントローラで電源を切るくらいはしたい……
と思いつつSteamを終了しようとしたところ。

えっ嘘でしょ本当に全部終わった。

見ての通り、Steamの操作で本機の電源を切ることが出来る。もう全部これでいい。しかも素晴らしいことに、ここまでコントローラだけで基本的には全て完結する。

というわけで、OSインストール後のSteam環境構築は本当にあっさり終了した。

ではこの環境で、本機をゲーム機として運用していくことにする。
Ubuntu+Steamはどのような動作をするのだろうか。そしてどの程度動くものなのだろうか?

4. 試遊 〜コイツ、動くの?〜

4.1 コントローラでの操作を検証

このBig Pictureモードは先程も少し書いたが、本当にコントローラだけで大体のことが完結する。
筆者は以前からLogicool F310(↓)を愛用しているのだが、ゲーム選択・ダウンロード・購入・レビューの閲覧まで本当にコントローラだけで全部行けることが判明した。
www.amazon.co.jp

しかも先述の通り電源ON直後にBig PictureモードのSteamが立ち上がるため、キーボードやマウスの出番はない。もうこれゲーム機じゃん。
なお、電源ONからSteamのゲームを選べるまでの時間はおよそ50秒程度。実際にはゲームを選んでから多少待たされることはあるものの、モノがパソコンであることを考えると十分な速度と言えそうに思う。

さて。
先程「キーボードやマウスの出番はない」と書いたものの、それはあくまで正常に動いている限りの話である、ということは述べておいた方がいいだろう。
動かしていると色々イレギュラーは発生するし、うっかりsteamが落ちたりということも稀に発生する。接続している入力デバイスがコントローラのみである場合、このようなときに途方に暮れる場合がある。
やはり、キーボードとマウスは常備しておいた方が良いと思う。常時接続までは必要ないかもしれない。*6

4.2 Steamゲームの動作を評価

まず最初に述べておきたい。本機をゲーム機として運用する、とは言ったが、そもそも本機のスペックはゲーム機として動かすことを想定されていない。 格安小型PCのレビューサイトもいくつか見たが、このようなマシンでゲームを出来るとは思わないほうが良いだろう、という意見がほとんどである。
よってここまで書いてきたものの本音を言ってしまうなら、スペックを必要としないゲームをいくつか動かしつつWindowsでなくUbuntuを採用することによる弊害を調べつつ最悪は自宅用Ubuntuサーバとして運用できればとりあえずOK、くらいの軽いノリではあったのだ。

……そのつもりだったのだが。

……と前置いた上で、私のライブラリにあったゲームをいくつかプレイしてみた結果を私の感想主軸で述べていくことにする。
なお、特筆しない限り、画面は1920x1080のフルスクリーンであるものとする。

<評価ゲーム1. Euro Truck Simulator 2>
ゲーム内容の参考動画↓
youtu.be

最初に評価対象としたのはこのゲームだ。発売は2012年と古いものの、画面上ではヨーロッパの美麗な風景と自らのトラックが常に動き続け、グラフィック周りに多少の負荷がかかることが想定される。
このゲームは本機でうまく動作してくれるのだろうか。

動作結果:○(「画質:中」にて良好動作)

……マジで?このゲームこんなPCでちゃんと動くの?……というくらい、何のストレスもなく動作した。
「画質:高」を選ぶと若干のカクツキが発生するが、「画質:中」まで下げれば一切問題なく運送業務をこなせる。
実際にはPCの発熱などのデータも取るべきなのだとは思うが取り方よくわからず……今回は割愛することに。

意外なくらいちゃんとゲーム機として振る舞えることがいきなり判明してしまった。マジか。

<評価ゲーム2. Iconoclasts>
ゲーム内容の参考動画↓
youtu.be

次にこのゲームを評価してみることにする。メトロイドヴァニアと呼ばれるタイプのゲームの中でも高い評価を得ている一作である。
もっとも、事前にETS2がストレス無く動作しているのだから本作が動かないはずもないと思われるが、果たして。

動作結果:◎(一切ストレス無く動作)

いや本当に一切のストレスがない。大変スムーズに動作する。このマシン2万円弱だよ?
冒頭から最初のボスを倒して30分ほど遊んでみたが、カクつきなどはほとんど見られなかった。
え、普通に遊べる……?

<評価ゲーム3. Tesla Force>
ゲーム内容の参考動画↓ youtu.be

最近やっていたからという理由で、このゲームも評価してみることにした。
ムービーを見てわかるとおり、大量の敵が出現したり大量の弾を撃ったりとなかなか忙しいゲームである。もちろん画面もなかなか忙しい。
さて、このゲームは遊べるだろうか。

動作結果:△(動作にややストレスあり)

明らかなカクツキが見られ、目がちょっとチカチカして大変。このクラスのゲームになると本機では若干厳しいか。
一応、画面描画周りの設定を下げられるだけ下げればなんとか動く。それでもなんとかようやく、といったところである。
やはり、ある程度画面の動きが激しいアクションの負荷に耐えられるような機械ではないようだ。

<評価ゲーム4. ことのはアムリラート>
(良い参考動画がなかったのでこちらでお茶を濁すことに……)
sukerasparo.com

お次はこれだ。なんでこれを選んだかと言えば最近プレイしていたからである。
とはいえ、ここまでドライブとかアクションとか動かしておいて、アドベンチャーゲームの本作が動かないわけがないじゃん?……と、読者諸氏は考えるであろうと思う。しかし、問題は別のところに発生した。一目瞭然の問題を見ていただこう。


残念ながら、本仕様でこのゲームが動くとは言えないことが判明した。
何らかのフォントを入れれば解決する可能性はあるが、少なくとも簡単には動かないのは間違いない。
このゲームを遊びたいのであれば、おとなしくWindows環境にSteamを投入するのが良いだろう。

<評価ゲーム5. Aaero>
ゲーム内容の参考動画↓
youtu.be

さらにこのゲームも検証してみよう。
3D空間を戦闘機で駆け抜ける、音ゲーとシューティングが混じったようなゲームである。
間違っても格安PCで動くなどと思うべきでないゲームだと思うが、果たして。

動作結果:○〜△(画面設定下げれば十分遊べる)

いやはや。動くのか。と思ってしまった。
個人的にはこのゲームは無理だろうと思っていた。確かに画質というかサイズ設定を下げる必要はあり、1024x800まで下げた画面をフルスクリーンに拡大すればストレスなく動くという程度のものではあり、快適に動作するとは言いにくい。とはいえこの価格帯のPCで遊べるとわかっただけでも収穫である。

<評価ゲーム6. GRID(2019)>
ゲーム内容の参考動画↓
youtu.be

最後に、たまたま持ってたレースゲームの動作評価を行って本評価を締めようと思う。
見ての通り、美麗なグラフィックが高速で動く本格的レーシングゲームだ。
こんなものを格安PCで動作させようとか我ながら頭がおかしいと思うが、さてどうなるだろうか。

動作結果:×(起動しない)

あったりめえである。
実際に動かしたところタイトルロゴの表示にすらカクツキを感じるレベルであった。そしてタイトルロゴ直後のローディングで数分待たされた後にソフトがエラー終了した。
なお、これは本機が悪いのではない。評価とはいえこんなものを格安PCで動作させようなどと考える筆者がおかしいのである。

<評価ゲーム その他>
他にもライブラリ内のゲームをいくつか試してみたので、これらも簡単に紹介する。
『Oxygen Not Included』『SteamWorld Dig 2』『Goat Simulator』『Cook, Serve, Delicious! 3!?』『ロゼと黄昏の古城』あたりは特に問題なく動作することを確認した。
サイドビューアクションローグライクの名作として数えられる『Noita』に関しても起動に若干(1分程度)の時間がかかる程度で、動作自体に問題はない。ダンジョンが燃えたり爆発したりする場面もそこそこなめらかに動く。
映像を見るアドベンチャーゲーム『IMMORTALITY』も試してみたが、ゲーム起動時のロードに数分程度待たされるくらいで、一度起動してしまえば特に問題なく遊べることが判明した。
動きの少ないRPGアドベンチャーゲームなどもおそらく問題なく動くと思われる。

ただし、ゲームによってはコントローラのみで動かすのが若干難しいものも少なくない。具体的には筆者の大好きな『Cultist Simulator』などが該当する。
Steam側のコントローラ設定を色々いじって動かすことは一応可能ではあるのだが、マウスとキーボードがあったほうが遊びやすいゲームもあるのは意識しておくべきである。このような理由からも、やはりマウスとキーボードはあったほうが良い。

というところで、あまり動きの激しくないインディーズゲームをプレイする用途であれば十分にこなせると言って良さそうである。
なお、モンスターハンターとかエルデンリングとかは筆者のライブラリに無いため試せていない。もっともGRIDと同じく、試すまでもなく不可能であろうと思われる(笑)。

5. 総評 〜じゃあ実際どうだったのか?〜

では、本機での評価プロジェクトの結論を述べていくことにする。

5.1 Ubuntu+SteamでのPCのゲーム機運用自体は十分アリ

少なくとも、ここは断言して良いと思う。
電源を入れて即座に起動し、コントローラでゲームを選んで遊ぶことに全く支障はない。 この挙動は完全にゲーム機のそれであるため、やはり「ゲーム機としての運用は可能である」と言い切って良さそうだ。
ただし『ことのはアムリラート』のように、OSの違いに由来する問題で満足に動作しないゲームがあると知れたのは収穫である。やりたいゲームがハズレ対象でも泣かない覚悟は必要と言えそうだ。
十分なスペックを備えたPCを導入するのであれば、Windows環境で似たようなことをやるのもアリなのかもしれない。*7

5.2 格安小型PCの性能と割り切れば十分遊べる

ここも意外な収穫だった。まさかETS2が普通に動くとか思わんやん……。
あまり派手なゲームを遊ばない方であれば、2万円台のPCをゲーム機として運用してもそこそこの満足は得られそうである。

安い環境でsteamの低価格インディーズゲームを大量に摂取する、とそのように割り切れるのであれば、本構成はコスパの良いゲーム体験を与えてくれるのではないだろうか。

5.3 「この構成はオススメできる?」

さて。
ここまで書いてきてしまった以上、筆者は以下の命題に真摯に向き合わねばならない、と思う。

問:「この構成はオススメ出来るものか?」

この問いに対し、筆者はこう答えざるを得ない。

答:「オススメできない。」

まず理由を語る前に先に述べておきたいのだが、筆者自身はこの環境に満足している。
コントローラーやUSBメモリなどを含めても2万円強程度の出費で構築した環境としては、コスパ的には十分だといえる。
また、Steam搭載機をテレビに繋いで遊ぶマシンにして運用しつつセーブデータをクラウド経由で個人用PCに渡せることもわかり*8、ゲームの運用の幅も広がったと思う。

オススメできない最大の理由は、環境構築自体の難易度にある。
記事の余談になってしまうので書かなかったが、実は環境構築の際に二点ほど問題が発生している。
一つは「有線ネットワークが繋がらない」という問題で、搭載されたネットワークアダプタLinux系の相性に起因するらしい。対応策も見つけられたので試してみたのだが、2日ほど調べても有線ネットワークの復旧には至らなかった。仕方がないのでWiFiでの運用を行っている。そもそもオンラインゲームをやらないならば無線ネットワークでも十分ではある。
もう一つは「HDMIから出してほしい音声出力がいくら設定してもヘッドホン端子出力に戻る」という問題で、これは設定ファイルを書き換えることでしか対処できないことが判明した。逆に言えば設定ファイルの書き換えで対処が可能な問題ではあったが……

さて発生した問題について書いてみたが筆者が言いたいのは、Windows環境よりもデバイス相性による問題が発生しやすく、かつ、対処には設定ファイルの書き換えなどと言った作業が求められる、ということである。
こういった作業に抵抗のない方でないと、パソコンのOSを入れ替えてゲーム機として運用するという作業はまだ若干難しいのではないかと愚考する。

またオススメできない理由の追加として、Windowsを選ばないことによる不利についても記載しておきたい。
どうしても世の中のパソコン界隈はWIndowsを中心に回っており、パソコンに期待されるソフトがLinuxでは動作しない、ということはザラにある。
ネットで得られる情報量にしても、やはりLinuxよりもWindowsのほうが容易に情報を得られるだろう。UbuntuLinuxの中では使われている部類であることを加味しても、である。
Steamを軸にしたゲーム機としての運用に限れば動作負荷などの兼ね合いでUbuntuに利があるとは思うが、とはいえ、Windowsでしか動作しないソフトは非常に多く存在するのも事実である。

6. おまけ:ゲーム機以外の運用について

さて、本機を純粋にゲーム機として扱ってはきたものの、steamを終了すればそこにあるのはUbuntu Desktopの画面であるため、もちろん普通にパソコンとしても使える。
というわけでおまけとして、ゲーム機として以外の運用についても触れておくことにする。

結論を最初に書くと、ブラウザでインターネットを見る程度であれば、本機のスペックでも全く問題はない。
レビューを見る限りメール送受信にも問題ないと記載があったが、おそらくそれも正しいだろうと思う。

UbuntuでもGoogle Chromeはインストールでき、クラウドに保存した個人設定を引っ張ってくればブラウジング環境の完成である。シンプル。
そしてこの程度のスペックでも、Youtubeニコニコ動画amazon prime videoで動画を見るだとか、Amazonでお買い物をするだとか、その程度の運用には全く支障はない。もっともそれだけならFire TV stickで十分とは思うが
ブログの作成も今まさに本機で試しているが、こちらも特に支障を感じることなくここまで書き進めることが出来た。

そしてせっかくUbuntuなのでということでSambaを入れてファイル共有用の簡易NASとしても使っているのだが、こちらも当然問題なく動作している。
そういったことを試してみるのも良いだろうと思う。

7. おわりに

というわけで長々書いてみたが、いかがだっただろうか。
格安PCをゲーム機として運用するという記事は軽く探した限り見つからなかったため、もしこの記事が誰かの目に留まり新たな体験の一助となるのであれば幸いである。

もしこの記事に書ききれていない点について聞きたい、あるいは似たような環境を作りたいが助けが欲しい、そういった方がもしいるのなら下記のTwitterまでご連絡頂きたい。可能な範囲で力になろうと思う。 twitter.com

以上をもって、この文章が誰かにとって有益なものであることを願いつつ本稿の筆を置くことにする。
また次の文書でお会いしよう。読者諸氏のゲーマーライフが良きものでありますように。

*1:本当に本当に余談なのだが、筆者宅では「テレビ用ディスプレイ」と「筆者個人のパソコン用ディスプレイ」は意味合いが違うのである。SteamDeckに関しては、「テレビ用ディスプレイ」に接続してゲーム機として運用する方針で想定していた。

*2:タイムセール割引で約20,000円。さらにクーポン割引で2,000円オフ

*3:主役と呼んでいる割に我ながら扱いが酷い

*4:無料で配布されているLinux系OSの一種。「誰にでも使いやすい最新かつ安定したOS」を目標として開発されている

*5:購入した製品のビデオボードとの相性に起因するらしい

*6:まあマウスとキーボードなしの運用でも最悪電源長押しで落とせば良いんだけど

*7:それはそれで完全にゲーム機にするのはもったいない気もするが

*8:すべてのゲームが対応しているわけでもないので要注意