Clockの雑文置き場

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エステロミア傭兵団ティティスの鉄獄紀行 Part46(エピローグ)


……というわけなんだ。

……団長、全部知ってたわけね……まあ、団長らしいわ。

あの二人も、最後まで話さずに消えるつもりだった、っていうのも、彼ららしいといえばらしい、かな。

……そうだ、ラフが残していった箱、開けてみましょうよ。全てが終わってから開けるように、って言ってたんでしょ?

そう……だね。

二人が頷き合うと、ラフニールから受け取った箱をそっと地面に置き、その蓋を開けた。
開かれた箱から淡い光が発したかと思えば、そこにはラフニールが立っていた。

……………

えっ……

ラフニール………!?

(こほん、と一つ咳払いをし)
……あー、あー。……うむ、うまく行っているようだな。

ラフ、どうしてここに……
(と言ってラフニールに触れようとする。だが、その手はラフニールの身体をすっとすり抜ける)

……うむ、よし。
貴様らがこれを見ているということは、どうやら貴様らは無事、私の依頼をこなしてくれたようだな。……おめでとう。そして、ありがとう。
本当はティティスを出迎えて祝福したかったが、叶わなかったのでな。こういう形を取らせてもらった。

……これは……

手紙、みたいなものなのかな……

貴様らが知っているかどうかは知らんが、私は混沌のサーペントに産み出されし幻影に過ぎん。
……黙っていて、すまなかった。いつか言おうと思っていたのだが、……やはり、消えるとは言い出しにくかったのだ。結局こうなってしまったことを詫びさせてもらう。

……随分、人間らしい考え方よね……

僕達に感化された、ってことなんだろう、ね……

……まったく、私も随分感化されたものだ……悪い気分ではない、「私」はな。
さて、「私」からはここまでだが……もう一人、貴様らに話をしたいものが居るのでな。聞いてやってくれ……

箱から産み出されたラフニールの幻影はそう言うと、目を閉じ、目線を中空に向ける。
ラフニールの身体が薄紅色に輝き、僅かに宙に浮いたかと思えば、淡い赤色のもやがその体を覆う。
開かれた目は赤く強く輝き、何者かが憑依しているかのように見えた。
その口からは、普段よりも若干低い声が響く。

……久しいな、人間ども。自分の幻影の身体を借りるというのは妙な気分だが、この者の身体を借り、我が言葉を伝える。

……!

……そうか、封じられし門のラフニールか……!

私の幻影が世話になったようだな。私からも礼を言わせてもらう。
貴様らの戦いは、幻影の目を通して見せてもらっていた。

……久しぶり、だね。

……本当に。……幻影を通してでも、ラフニールの威圧感が伝わってくる。まるでここにいるみたいだわ。

貴様らにこの映像が届いているということは、貴様らは混沌のサーペントをも討ち倒したということだろうな。
……見事だ。本当に見事だ。本来、私がこの身に代えても討ち倒さねばならなかった相手を倒してくれたこと、感謝する。

……大変だったんだからね。

さて、幻影がどこまで話してくれているか解らぬが……私は今も、あの門の奥底に居る。まったく、本当に忌々しいものだな。……幻影にあれだけ自由に動かれた今、本当にそう思う。

ああ、……いろいろ、あった。本当に。

それと、いろいろこき使ってもくれたようだな。そこも……感謝しているぞ。フフ。

(ぎくっ!)

貴様らの戦いは見事の一言に尽きたぞ。私も様々な戦いを見てきたが、実に見応えがあった。
時々不安にはさせられたが、最後には勝つのだろうという期待も出来た。
まあ、私を幾度と無く倒した者達なのだ、負けることなどはあるまいさ。

……まったく。当たり前じゃないの、ラフニール。

……そして……私も久しぶりに、貴様らに会いたいと……思う。
幻影が貴様らと楽しそうに話しているのを見てしまっては、な。

……これほど、待ち遠しいのは初めてだ。

ラフニール………

……私には戦うことくらいしか出来ぬ。定命の貴様らが老いて死んでいくのを、私は見ていることしか出来なかろう。
……だからせめて、貴様らが生きている間は貴様らの最強の敵でありたいと願う。そうあり続けると約束しよう。
貴様らへの敬意の払い方を……他に、知らぬのだ。

ああ、ラフニールは本当にラフニールだ……それでこそあの魔竜だ……

貴様らならいつでも歓迎する。また私に倒されに来るが良い。もし倒せたなら、褒美の一つも持っていけ。
……だから。
……いつでも、来るがいい。途中でサキュバスに茶でも出させよう。……素直に飲めるかは知らぬがな。

ほんっと、竜の姿でも人の姿でも、殺されそうなくらい不器用なんだから……!

でも、それでこそあの魔竜だよ。
団長が以前、「ラフニールが居なくなったら退屈で死ぬかもしれん」とか言ってた気持ちが……今なら、少し解る。

(身体を覆う赤色のもやが溶け、ふわりと地上に立つ。そこにいるのは、これまでの冒険で、彼らが見慣れたラフニール)
……以上、「ラフニール」からの言葉を伝えたぞ。……奴の願いを聞くかどうかは、好きにするがいい。

…………

さて。貴様らには一つ約束をしていたな、覚えているか?
……その街には慣れたかもしれぬが、やはり元の街の方が良かろう。
この映像が消えたら、箱の下を調べろ。その巻物を読めば、元の場所に戻れる。

あ……

そういえば、あったわね……

……む、貴様も一言、言っておくか?

(ラフニールの影に隠れるようにしていたサキュバスがその姿を表し)
ええ。……とはいえ、私にはまだ時間もありますから。……おめでとうございます、皆様。幻影の私は消えてしまいますが、いずれまた。本体のほうで、お会いしましょう♪

……だ、そうだ。
……そろそろこの箱の魔力も限界か。……ではな貴様ら、また会おう(と言うが早いか、その姿はサキュバスと共に虚空に消える)

…………

…………

ったく、言いたいことばっかりいってくれるわね……

それも、彼ららしいといえばらしいか………あ、そういえば。
(箱の中を調べる。確かにそこには巻物が入っていた)

……これ、か。……(巻物の呪文を読む。巻物が光を発し……)



……ラフが訪ねてきた時の、辺境の街ね。

うん。クエストの時にちょっと戻ってきただけだから、少し懐かしくも思えるね。

……ジョシュア、これからどうしよ……ん、ちょっとまって。団長から郵便が届いてるわよ。

え?(届いた手紙を見て………)……………ふ、ふふふ、はははは……団長!これわざとやってますよね、団長!?

え?(ジョシュアから手紙を受け取り)…………
「団員諸君、休暇を満喫しているだろうか。団長は団員の身体が鈍っていないか不安である。そこで、身体の訛りを感じる団員諸氏に向け、封じられし門最下層近辺にて強化訓練を行うことにした。参加するかしないかは諸君の自由だが、我こそはと思うものはエステロミア傭兵団拠点へ集え!」
……………あっはははははははは!

……よし。

行きましょうか!

ラフニールに会いに!





〜The End〜

勝利データ→http://www.kmc.gr.jp/~habu/local/hengscore/showdump.cgi?66636